今こそチャンス！「脱炭素」で実現する経営メリット

気候変動対策が世界的な課題となる中、日本でも多くの企業が脱炭素（CO2などの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすること）に向けた取り組みを加速させています。

「環境のためとはいえコストがかかりそう」と思われがちですが、じつはそんなことはありません。政府が2050年カーボンニュートラル宣言を行って以降、様々な企業が独自の手法で脱炭素に挑戦し、エネルギーコスト削減、業務効率化、さらには新たな顧客獲得といった明確なビジネスメリットを生み出しているんです。

補助金や優遇税制も活用できるため、初期投資の負担も思ったより小さいケースが多いのもポイント。ということでこの記事では、具体的な成功事例をご紹介しながら、脱炭素が生み出す経営メリットと、明日からできる実践方法についてご紹介します。

コスト削減につながる！再生可能エネルギーへの転換

飲料メーカーのサントリーホールディングスでは、2022年に国内の全29工場で使用する電力を100％再生可能エネルギーに切り替えることに成功しました。同社のウェブサイトによると、この取り組みにより年間約12万トンのCO2排出量を削減しただけでなく、長期的な電力コスト安定化というメリットも得られたとのことです。

また、大手小売りのイオングループも、2040年までに店舗で使用する電力の50%を再生可能エネルギーにする目標を掲げ、この取り組みを環境配慮型店舗としてPRすることで、環境意識の高い顧客層の支持を集めています。

特に注目したいのは、少ない投資で始められる取り組み。静岡県の製紙会社・大興製紙は自社工場の屋根に太陽光発電システムを導入し、年間電力使用量の約20％を賄っています。同社は自社ウェブサイトで「初期投資は必要でしたが、国の補助金も活用し、5年程度で元が取れる見込みです。その後は純粋な電気代削減としてキャッシュフロー改善に貢献しています」と報告しています。

また、電力会社との契約で「RE100プラン」（再生可能エネルギー100％の電力プラン）を選ぶだけでも脱炭素に貢献できます。多くの電力会社がこうしたプランを提供しており、追加コストも比較的抑えられているようです。

利益を得る仕組みに変わる！ 省エネと資源循環

脱炭素は「我慢」や「制限」ではなく、むしろビジネスプロセスの最適化、と言えるでしょう。省エネルギーの徹底や廃棄物の削減、資源循環の促進は、無駄を省き収益性を高める経営改善そのものなのです。

IT機器メーカーのリコーグループでは、製品の設計段階から環境負荷を減らす「エコデザイン」を導入し、使用済み製品から回収した部品を新製品に再利用するシステムを構築。同社の報告によれば、この取り組みにより2021年度は約2万3千トンのCO2排出削減だけでなく、部品調達コストの15%削減にもつながったとされています。

愛知県の自動車部品メーカー・アイシン精機は、工場内の照明のLED化や生産設備の省エネ改修を進め、5年間で約15％のエネルギー使用量削減に成功。同社の担当者は「省エネ設備への更新費用は年間600万円程度の削減効果で4年で回収できました。さらに予想外の効果として、作業環境の改善による生産性向上も見られています」と述べています。

また、食品ロス削減に取り組む惣菜チェーン・オリジン東秀では、AI需要予測システムを導入し、廃棄ロスを約40％削減。これにより年間約8,000万円のコスト削減を実現したと報告しています。こうした「無駄をなくす」取り組みは、環境対策であると同時に、直接的な利益改善につながる経営戦略なのです。

明日からできる！ デジタル技術で簡単・脱炭素

そして近年注目を集めているのが、デジタル技術を活用した脱炭素の取り組みです。比較的少ない投資で大きな効果を生み出せるため、多くの企業が取り入れ始めているようです。

ご存知ソフトバンクグループは、AI技術を活用してオフィスビルの空調や照明を最適制御するシステムを導入し、エネルギー使用量を約12％削減。このシステムは外付けセンサーとクラウドサービスの組み合わせで、大規模な設備改修なしに導入できる点が魅力です。同社のウェブサイトによれば「ビル全体の設備を一新する場合と比べて、1/5程度のコストで始められる」とのことです。

さらに物流業界でも革新が起きています。ヤマト運輸ではAIによる配送ルートの最適化システムを導入し、走行距離の短縮によりCO2排出量を8％削減。同時に配送効率の向上によりドライバーの労働時間も短縮され、人手不足対策にも貢献しているそうです。

長野県の製造業・諏訪精工（従業員120名）の事例も参考になります。同社はわずか50万円の投資で工場内にIoTセンサーを設置し、電力使用量をリアルタイムで可視化するシステムを導入。同社役員は「無駄な電力使用が明確になり、社員の省エネ意識も高まりました。特別な設備投資をしなくても、使い方の工夫だけで約7%の電力削減につながりました」と語っています。

「脱炭素経営」で環境対策と収益向上の両立を

脱炭素への取り組みは、初期投資を抑えながら着実に進められるもの。多くの自治体が脱炭素に取り組む企業への支援制度を設けていて、環境省の「脱炭素経営促進ネットワーク」では無料のコンサルティングも受けられます。さらに、環境に配慮した経営はESG投資の対象となり資金調達面でも有利になるほか、取引先や消費者からの支持を集めることもできます。環境対策と収益向上を両立させる脱炭素経営。今すぐできることから始めてみませんか？