製造業や物流業、医療施設など、電力安定が必須な企業や災害時の事業継続を求める企業において需要の高い産業用蓄電池。節電用途だけでなく、災害や停電といった有事の際には企業の事業継続を支える重要な役割も果たします。
この記事では、実際に蓄電池が活躍した事例を3つの観点から紹介。蓄電池を導入することで企業の信頼性と競争力を高めましょう。
蓄電池の需要と近年のトレンド

さまざまな企業で幅広い目的のために利用されている産業用蓄電池。特に製造業では、生産ラインの安定稼働が求められるため、停電や電力不足への対策として蓄電池を導入している事例が多く見られます。また、食品業界では冷蔵庫や冷凍庫の電力供給を途絶えさせないことが必須であり、災害時でも品質を維持するために蓄電池が活用されています。一方で、物流業では倉庫の照明やコンピュータシステムの稼働を維持するために導入され、配送の遅延を防ぐ効果を発揮しています。
さらに、医療施設では命を守るための機器への安定的な電力供給が不可欠であり、停電時にも医療サービスを継続できるよう蓄電池が活用されています。加えて、多くの企業が節電や電力料金の削減を目的として蓄電池を利用しており、ピークシフトや再生可能エネルギーとの連携による電力効率の向上に成功。蓄電池は災害対策だけでなく、平時にも持続可能な経営を支える重要な資源となっているのです。
なお近年のトレンドとしては、容量の大型化や効率的な充放電技術といった機能の進化が顕著に。再生可能エネルギーとの連携が進み、余剰電力の蓄電やピークシフトによる電力コスト削減も注目されているようです。また、全固体電池(※液体ではなく固体の電解質で構成されている電池を)など次世代技術の開発も進み、より安全で長寿命な蓄電池が市場に投入され始めています。

「もしも」に頼れる! 蓄電池の活躍事例

災害時の非常用電源としての利用や、環境負荷軽減を目的とした導入が増加し、企業や自治体での需要が急速に拡大している蓄電池。ここでは、私たちがよく知る「もしも」の際に活用された事例を紹介していきます。
- 大規模地震で命をつないだのは企業継続の備え
- 台風15号による広範囲の停電から早期復旧
- パンデミックに直面した医療施設の電力供給源
東日本大震災での事業継続を支えた蓄電池の力
2011年の東日本大震災では、多くの企業が停電による事業停止の危機に直面しました。その中で、ある製造業の企業が導入していた産業用蓄電池が大きな役割を果たしました。この企業は、震災前からBCP(事業継続計画)の一環として蓄電池を導入しており、停電時にも蓄電池に蓄えた電力を活用して生産ラインを稼働させることができました。
特に、食品製造業では冷蔵設備の稼働が命綱となります。この企業では、蓄電池が冷蔵庫や冷凍庫の電力を供給し続けたため、製品の品質を維持し、顧客への供給を途絶えさせることなく対応できました。蓄電池が単なるバックアップ電源ではなく、企業の信頼性を守る重要な資産であることを示す好例です。
台風被害での迅速な復旧を可能にした蓄電池
近年、台風による大規模停電が頻発しています。2019年の台風15号では、千葉県を中心に大規模な停電が発生し、多くの企業が影響を受けました。しかし、ある物流企業では、産業用蓄電池が停電時の電力供給を担い、迅速な復旧を可能にしました。
この企業は、物流センターに設置した蓄電池を活用し、停電中も倉庫内の照明やコンピュータシステムを稼働させることができました。これにより、配送スケジュールの遅延を最小限に抑え、顧客からの信頼を維持することができたのです。また、蓄電池が太陽光発電システムと連携していたため、昼間の発電分を蓄電池に蓄え、夜間の電力供給にも対応できました。このような事例は、蓄電池が災害時のレジリエンスを高める効果を持つことを示しています。
新型コロナウイルス禍での医療施設の安定運営
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療施設の安定した電力供給が求められる場面が増えました。ある病院では、産業用蓄電池が停電時のバックアップ電源として活躍。この病院では、蓄電池が人工呼吸器やモニタリング機器などの重要な医療機器に電力を供給し、患者の安全を確保しました。
さらに、蓄電池は電力需要のピークシフトにも活用され、電気料金の削減にも寄与しました。これにより病院は経済的な負担を軽減しつつ、安定した医療サービスを提供することができたのです。蓄電池が医療現場においても重要な役割を果たしていることがよく分かります。
産業用蓄電池の可能性を再認識しよう
産業用蓄電池は、災害や停電といった有事の際に企業の事業継続を支えるだけでなく、平時においても電力コストの削減や環境負荷の軽減に貢献しています。今回ご紹介した事例からも分かるように、蓄電池は単なる電力の貯蔵装置ではなく、企業の信頼性や競争力を高める重要な資産と言えるでしょう。