太陽光パネル設置が義務化されたけれど… 猛暑だと発電効率が悪いって本当？ リスク回避の方法とは

経済産業省は2026年度から、化石燃料の利用が多い工場や店舗を持つ約1万2000事業者に対し、屋根置き太陽光パネルの導入目標策定を義務づける方針を発表しました。この新制度は、日本の脱炭素化推進と再生可能エネルギー普及を目的としており、対象となる事業者は具体的な導入計画を策定し、国に報告することが求められます。

対象となるのは、主に製造業、小売業、飲食業など、比較的大きな施設を持ち、化石燃料への依存度が高い事業者です。中小企業であっても、工場や大型店舗を運営している場合は対象となる可能性があります。この制度により、事業者は自社の屋根スペースを活用した太陽光発電システムの導入を検討せざるを得ない状況となりました。

猛暑の夏は“発電効率低下”のリスク？

太陽光発電システムを検討する際、多くの経営者が見落としがちなのが気候条件による発電効率の変動です。特に近年の猛暑は、太陽光パネルの発電効率に深刻な影響を与えています。

太陽光パネルは、実は高温になると発電効率が低下する特性があります。一般的に、パネル温度が1度上昇するごとに、発電量は約0.4〜0.5%減少します。夏場の屋根上では、パネル温度が60〜80度に達することも珍しくなく、この場合、定格出力の20〜30%も発電量が低下する可能性があります。

さらに、猛暑による電力需要の急激な増加は、電力系統の不安定化を招き、太陽光発電の出力抑制が実施されることもあります。これらの要因により、期待していた発電量を得られず、投資回収期間が延長するリスクが存在します。

自社負担で太陽光発電システム導入はリスクがある

太陽光発電システムを自社負担で導入する場合、初期投資額は数百万円から数千万円に及びます。しかし、前述の発電効率低下リスクに加え、以下のような課題があります。

まず、設備の維持管理コストです。太陽光パネルは20〜25年の耐用年数がありますが、その間にパワーコンディショナーの交換（10〜15年に1回）や定期的な清掃、点検が必要です。これらの費用は年間で売電収入の5〜10%程度を占める場合があります。

また、技術革新による設備の陳腐化リスクも無視できません。太陽光発電技術は日進月歩で進化しており、現在導入したシステムが数年後には効率の劣る旧式設備となる可能性があります。

さらに、売電価格の低下も大きなリスクです。FIT（固定価格買取制度）の買取価格は年々下落傾向にあり、投資回収の見通しが立てにくい状況が続いています。

太陽光PPAという解決策

こうしたリスクを回避する有効な手段として注目されているのが、太陽光PPA（Power Purchase Agreement）です。PPAは「第三者所有モデル」とも呼ばれ、PPA事業者が事業者の屋根に太陽光発電システムを無償で設置し、発電した電力を事業者が購入する仕組みです。

PPAの最大のメリットは、初期投資が不要であることです。設備の所有権はPPA事業者にあるため、導入企業は設備投資リスクを負わずに済みます。また、設備の維持管理もPPA事業者が行うため、専門知識がなくても安心して利用できます。

発電効率の低下リスクについても、PPA事業者が技術的な責任を持つため、導入企業への影響は限定的です。PPA事業者は発電量の最大化に向けて、最適な設備選定や維持管理を行う経済的インセンティブがあるためです。

さらに、PPAでは通常、既存の電力料金よりも安価な単価で電力を供給するため、電力コストの削減効果も期待できます。契約期間は10〜20年程度が一般的で、期間中は安定した電力供給を受けることができます。

今のうちから対応策を考えよう

太陽発電システムの導入前には、自社が対象事業者に該当するかの確認が必要です。化石燃料使用量や施設規模を基準とした詳細な対象要件が今後発表される予定ですが、早期に情報収集を行い、該当の可能性が高い場合は準備を進めることが重要です。

次に、屋根の状況調査も必要でしょう。太陽光パネル設置に適した屋根かどうか、構造的な問題はないか、設置可能面積はどの程度かを専門業者に診断してもらいましょう。

そして、導入方式の検討です。自社負担での導入とPPAのメリット・デメリットを比較し、自社の財務状況やリスク許容度に応じて最適な選択肢を選ぶことが重要です。

最後に、複数の事業者からの見積もり取得と比較検討を行い、信頼できるパートナーを選定することが成功の鍵となります。この新制度は、単なる義務ではなく、エネルギーコスト削減と環境貢献を両立させる機会として捉えることができます。適切な準備と戦略的な判断により、競合他社に対するアドバンテージを築くことも可能です。

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