エネルギー価格の高騰が大きな負担となっている昨今において、経費削減の観点から多くの企業が省エネ対策に取り組んでいます。また、世界的に求められる環境対策や国内の電力需給バランスの維持のため、企業は国からの節電要請に協力することが求められています。
とはいえ、単純に節電対策といっても企業が行う上では何かと費用が掛かることも……。そこでこの記事では、企業が行う節電対策で「あまり費用が掛からない対策」「投資が必要な対策」について考えてみたいと思います。
「投資が必要な対策」については工事内容と参考費用についても触れていますので、省エネ対策、節電に関わる費用に興味のある方はぜひご参考ください。
「あまり費用が掛からない対策」
従業員へ節電を呼びかける
まず、シンプルですぐに実践できる節電方法のひとつが、全社を挙げた省エネ活動です。世界的に環境問題への取り組みが課題となっているなか、多くの人に節電意識が芽生えていることと思います。
クールビズや冬は厚着をするなどの季節に合わせた洋服選びや、こまめに照明を消す、冷蔵庫・冷凍庫の扉を開けっぱなしにしないなど、家庭での節電にも通じる部分があるので、基本的なルールを設定して周知することで多くの従業員が協力してくれるものと思います。
ただし、過度な節電要請は業務効率の低下や従業員のモチベーションの低下につながる可能性もあるので、業務に支障が出ない程度の節電対策にするよう注意が必要です。
空調の利用状況をチェック
無駄に空調を使っていないか、日ごろの利用方法をチェックすることも節電対策になります。一般的に空調の設定温度を1℃緩和すると、消費電力が約10%低下するといわれています。必要以上に設定温度を高くしたり低くしたりせず、適切な温度に調整することが重要になります。
ただ、近年は極端な暑さや寒さの日も多く、室内を適温に保つことが難しいので空調の温度を設定するのも難しいですが、設定温度を調整するだけではなく、ブラインドやカーテンを有効利用して日差しを避けたり、暖気が逃げないようにすることで空調の効率を上げることができます。ほかにも、目詰まりしないようにフィルターをこまめに清掃したり、運転の妨げにならないように室外機周辺の障害物を撤去することで、消費電力を抑えることができます。
電力会社を見直す
2016年からスタートした電力市場の自由化により、現在は電力会社の選択肢が豊富に存在しています。既存の電力会社との交渉で使用する電力量を変えずに料金を減らすことができるプランに変更できれば最良ですが、それが叶わない場合は電力会社の変更も視野に入ってきます。
複数の電力会社から選定する際には、まず自社の電力消費がピークとなる時間帯を把握しておく必要があります。電力需給のピークタイムを避けた料金プラン選ぶことで電気代の削減が可能になります。そして、自社の電力需給のピークタイムを知っておくことは、エネルギー戦略の再考につながり、節電対策としても有効です。
「ある程度の投資が必要な対策」工事内容と効果
LED電球に変更する
従来の蛍光灯や白熱電球からLED照明に切り替えることは大幅な電力削減になります。LED照明は蛍光灯や白熱電球と比べ、使用方法によって異なりますが、蛍光灯の約1/3程度まで消費電力を抑えることが可能という特徴があります。また寿命が長いので交換頻度を減らすことができ、照明にかかるコストを削減することができるというメリットもあります。
照明をLEDに切り替えるには、基本的にLED照明に適した機器に変更するための工事が必要となります。工事費用は照明器具の種類や数、工事における工数の変化などによって異なりますが、目安としては1台あたり3,000円~5,000円程度と言われています。初期費用としては高いと感じるかもしれませんが、長期的に見れば節電とともにコストカットになると思います。
ちなみに、可能な範囲で照明を間引きして設置数を減らすという考えもありますが、働く場所が「暗い」という状況は従業員の健康やメンタルに悪影響を及ぼす可能性があるので、推奨はできません。
太陽光発電を導入する
電力会社から電気を購入するのではなく、自社で電気を作るという選択肢もあります。自社で作ることによって節電にもなりますし、電気代の削減にもつながります。
太陽光発電には、発電した電力の全てを小売電気事業者に販売する「全量売電型」、余った電力だけを販売する「余剰売電型」、発電した電気を全て自社で消費する「自家消費型」の3種類があります。そのなかで一番省エネ効果が高いとされるのが自家消費型です。
なお、自家消費型の太陽光発電の導入には高額な初期費用が必要となります。規模や容量、地上に設置するのか屋根に設置するのかなど、様々なパターンがありますが、ざっくりとした目安として約1,000万円~3,000万円ほどの費用が掛かるといわれています。
ただ、太陽光発電の導入は国策として積極的に推進されているので、国や自治体で様々な補助金・助成金が用意されています。これらの制度を活用すれば、投資額の回収期間を早めることができます。
太陽光発電の導入に活用できる補助金について解説している記事もあるので、併せてご参考にしてください。
デマンド・コントロール・システムの導入
電気の基本料金を決定する際、1日を48回に分けて、30分ごとに消費された電力量(kW)を平均した「デマンド値」で、最も電気を使用した「最大デマンド」が参照されます。
そのため、このデマンド値を監視しながら、設定された値を超えないように自動制御を行ってくれるデマンド・コントロール・システムの導入が節電とともに経費の削減にも有効です。
デマンド値を制御してくれるデマンドコントローラーの導入については、小規模向けで約20万円~35万円程度、大規模向けで100万円以上かかるとされています。ただ、こちらについても太陽光発電の導入と同様に、自治体などで補助金制度が設けられていますので、活用することで初期費用を抑えることが可能です。
積極的な節電対策は自社のメリットに
すぐに取り組むことが可能な「あまり費用が掛からない対策」とじっくりと考える必要がある「ある程度の投資が必要な対策」について考えていました。
どちらも経費削減になることはもちろんですが、積極的に節電に取り組む姿勢は自社のイメージアップにもつながり、社会的評価の向上につながります。
長い目で見れば自社にとって大きなプラスになるのではないでしょうか。