「使われていない農地をどうにか活用できないだろうか」「電気代が上がって家計が厳しい」「環境のために何かできることはないか」そんな悩みを抱える農地所有者や土地所有者の方々が増えています。
実は、これらの課題を同時に解決できる仕組みがあります。それが「ソーラーシェアリング」です。営農型太陽光発電とも呼ばれるこの技術は、農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と発電を両立させる画期的な手法です。
特に、耕作放棄地(青地)の有効活用として注目されており、土地の新たな収益源を生み出しながら、環境・エネルギー問題の解決にも貢献できます。初期投資の心配も、PPAモデルという新しい導入方法により解決できるようになりました。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは
ソーラーシェアリングについて正しく理解するために、まずその基本的な仕組みと特徴を確認しましょう。
ソーラーシェアリングの基本的な仕組み
ソーラーシェアリングは、農地の上空約3~4メートルの高さに太陽光パネルを設置し、その下で農業を継続する仕組みです。パネルは適度な間隔を空けて配置されるため、作物の生育に必要な日光を確保しながら発電を行えます。
この仕組みでは、「農業収入」と「売電収入」という2つの収益源を同一の土地から得ることができます。農地としての機能を維持したまま、追加の収益を生み出せる点が最大の特徴です。
技術的には、パネルの遮光率を30~40%程度に抑えることで、多くの作物で十分な収量を維持できることが実証されています。むしろ、適度な遮光により夏場の高温ストレスが軽減され、作物によっては収量が向上する場合もあります。
従来の太陽光発電との違い
従来の太陽光発電は農地を完全に転用するため、農業ができなくなってしまいます。一方、ソーラーシェアリングでは農地転用が不要で、農地のまま発電事業を行えます。
また、設置方法も大きく異なります。従来型は地面に直接設置しますが、ソーラーシェアリングでは支柱により空中に設置するため、農業機械の通行や作業に支障がありません。
法的な手続きも簡素化されており、一般的に農地転用許可ではなく「一時転用許可」で済むため、手続きにかかる時間と費用を大幅に削減できます。許可期間は3年または10年で、更新も可能です。
耕作放棄地活用の新たな可能性
日本では農業従事者の高齢化や後継者不足により、耕作放棄地が年々増加しています。こうした土地の有効活用手段として、ソーラーシェアリングは大きな可能性を秘めています。
耕作放棄地にソーラーシェアリングを導入することで、土地を農地として維持しながら収益を生み出すことが可能です。また、発電事業により地域に雇用を創出し、地域経済の活性化にも貢献できる可能性が広がります。
さらに、ソーラーシェアリングの導入により、放棄されていた農地が再び管理されるようになり、景観の改善や土地の荒廃防止にもつながります。
農地所有者が得られる3つのメリット
ソーラーシェアリングの導入により、農地所有者は複数の具体的なメリットを得ることができます。
新たな収入源としての売電収益
ソーラーシェアリングの最大のメリットは、農業収入に加えて売電収入を得られることです。一般的に、1ヘクタールの農地に設置できる太陽光パネル容量は500~700kW程度で、年間50~70万kWhの発電が期待できます。
現在のFIT価格で計算すると、年間500~700万円程度の売電収入が見込めます。農業収入と合わせることで、同一の土地から従来の数倍の収益を得ることが可能になります。
また、20年間の固定価格での買取が保証されているため、長期的に安定した収入源を確保できます。これにより、農業経営の安定化や設備投資の資金調達も可能になります。
環境貢献と地域社会への貢献
ソーラーシェアリングは、環境・エネルギー問題の解決に直接貢献できる取り組みです。1ヘクタールのシステムで年間約300~400トンのCO2削減効果が期待でき、これは一般家庭約100世帯分の年間CO2排出量に相当します。
また、地産地消のエネルギー供給により、地域のエネルギー自給率向上にも寄与します。災害時の非常用電源としても活用でき、地域の防災力強化にもつながります。
さらに、農業と再生可能エネルギーを両立させる先進的な取り組みとして、地域のブランド価値向上や観光資源としての活用も期待できます。
土地の有効活用と資産価値向上
ソーラーシェアリングにより、これまで収益を生まなかった耕作放棄地も有効活用できるようになります。農地として維持しながら収益を生み出すため、農地法による制約を受けることなく投資効果を得られます。
また、発電設備の設置により土地の付加価値が向上し、資産価値の増加も期待できます。将来的に土地を売却する際も、ソーラーシェアリング付きの農地として高い評価を受ける可能性が考えられます。
相続時においても、収益を生む土地として評価されるため、相続税の負担軽減効果も期待できます。
初期投資を抑える導入方法とステップ
ソーラーシェアリングに興味があっても、初期投資が心配という方のために、リスクを抑えた導入方法をご紹介します。
PPAモデルによる初期費用ゼロの導入
初期投資の負担を懸念を解消するには、PPAモデル(Power Purchase Agreement)による導入がおすすめです。「第三者所有モデル」とも呼ばれる仕組みで、土地所有者は土地を提供し、太陽光発電事業者が初期投資を負担して設備を設置。発電した電力を市場価格より安い価格で土地の提供者が購入できる仕組みです。設備の設置費用、保守管理、故障時の対応はすべて事業者が負担するため、初期投資ゼロで太陽光発電を導入できる可能性があります。
自家消費分の電力を市場価格より安く購入できるため、電気代削減効果も期待できます。設備の保守管理も事業者が行うため、土地所有者の負担はほとんどありません。
一般的な導入効果と収益性
自己所有による導入の場合、初期投資は1ヘクタールあたり3,000~5,000万円程度が一般的です。しかし、年間の売電収入と農業収入を合わせることで、10~15年程度での投資回収が期待できます。
PPAモデルの場合は初期投資ゼロで、20年間の契約期間終了後は、設備の譲渡や契約更新など、土地所有者の希望に応じた選択が可能です。
また、農業との両立により、単純な太陽光発電事業よりも地域社会からの理解を得やすく、安定した事業運営が可能です。
導入時の検討ポイントと手続き
ソーラーシェアリングの導入には、まず農地の条件確認が重要です。日照条件、農地法上の制約などを総合的に評価する必要があります。
手続きとしては、農業委員会への一時転用許可申請、FIT認定申請などが必要です。これらの手続きについても事業者によってはサポートしてくれるため、土地所有者の負担は最小限に抑えられます。
また、導入後も農業を継続するため、適切な作物選択と栽培管理が重要です。ソーラーシェアリングに適した作物について、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
農地の新たな可能性を開く
ソーラーシェアリングは、農地所有者にとって新たな収益機会を提供するだけでなく、環境・エネルギー問題の解決にも貢献する革新的な仕組みです。
耕作放棄地の有効活用から始まり、農業経営の安定化、地域経済の活性化まで、多面的な効果が期待できます。PPAモデルの活用により、初期投資の心配なく導入を検討することも可能です。
農地という貴重な資源を最大限に活用し、持続可能な社会の実現に貢献するソーラーシェアリング。まずは自分の土地でどのような可能性があるか、専門家に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
ソーラーシェアリングの導入可能性や具体的な収益シミュレーションについて、より詳しい情報をお求めの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


