企業の環境対策が重要視される中で、再生可能エネルギーへの注目が高まっています。
特に太陽光発電は電気代の削減効果が大きく環境にも良いことから、導入する企業が増えています。しかし、「実は太陽光発電は環境に悪いのでは?」と疑問視する声も散見されます。
そこでこの記事では、太陽光発電が環境に悪いと言われている理由について解説します。
太陽光発電はエコじゃない?
再生可能エネルギーとして普及しているはずの太陽光発電に対して、「エコじゃない」と主張する声が散見されます。
その主張の根拠の多くは、「太陽光発電は発電時のCO2削減よりも太陽光設備の製造や廃棄段階でのCO2排出の方が多い」とするもの。
しかし、環境省の資料によれば、実際には太陽光発電のライフサイクル全体のCO2排出量は非常に少ないことが示されています。特に、太陽光発電は発電時に排出するCO2が圧倒的に少なく、LNGを用いた火力発電と比較しても環境に優しいエネルギーだとわかります。
環境省のデータによると、太陽光発電のライフサイクルにおけるCO2排出量の「38」に対して、LNGを使用した高効率火力発電では「430」に達します。これは太陽光発電が火力発電と比較してCO2の排出量が10分の1以下であることを意味します。
その一方で、石油火力や石炭火力発電では、「738」や「1,079」といったさらに高い数値が示されており、太陽光発電がどれだけ低排出であるかが一目瞭然です。
このことから、太陽光発電は持続可能なエネルギー源として非常に重要であり、エコでない、環境に悪いという考えは誤解であると言えるでしょう。
太陽光発電が環境に悪いと誤解されてる理由
太陽光発電は再生可能エネルギーとして、多くの期待が寄せられていますが、その一方で環境に悪いと誤解されることがあります。主な理由を見ていきましょう。
【太陽光発電が環境に悪いと誤解されてる理由】
- 太陽光パネルの製造にエネルギーを消費するから
- 太陽光パネルの廃棄が処理が難しいから
- 太陽光システム設置に森林伐採すると言われているから
- 発電量が足らずに他の電力も使用するから
太陽光パネルの製造にエネルギーを消費するから
太陽光パネルの製造には大量のエネルギーを消費します。
ソーラーパネルの生産に必要なレアメタルの採掘や精製には、膨大なエネルギーが使われるため環境への負荷が懸念されています。製造工程で発生する二酸化炭素の排出も、環境への影響を考える際には無視できません。
このような理由から、一部の人々は太陽光発電が実は環境に悪いのではないかと誤解することがあります。
しかし、技術の進歩により、より効率的な製造プロセスやリサイクル技術の開発が進展しており、環境負荷を低減する取り組みが行われています。
太陽光パネルの廃棄が処理が難しいから
使用済みの太陽光パネルは廃棄物となり、その処理が難しいとされています。
特に、製造に用いられる有害物質や、その中に含まれる希少資源の適切な処理が求められます。
廃棄物の適切な処理は、太陽光発電の普及に伴い、ますます重要な課題となってきており、リサイクル技術の改善や廃棄物管理の強化が求められるでしょう。
しかし、太陽光発電協会のレポートを見てもわかるように、すでに太陽光パネルの一部の素材はリサイクルが進んでいることからも、太陽光パネルの廃棄問題、リサイクル問題の解決はそう遠くないと思われます。
太陽光システム設置に森林伐採すると言われているから
太陽光発電設備の設置には大規模な土地が必要となるため、時に森林伐採が行われることがあります。
これが、環境に悪影響を与えるとの誤解を生む原因の一つです。しかし、実際には、設置場所の選定において環境への影響を最小限にする努力がなされています。
長野県環境部長の猿田氏の回答(2022年11月)を見ても、自治体単位でも環境影響評価制度や関係制度の見直しを積極的に行っており、国単位でも森林への影響を重要視していることがわかります。
メガソーラーの建設に関して、これまでも環境影響評価制度や林地開発許可、景観法に基づく届出などの関係制度の積極的な見直しを行ってきたほか、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく再エネ促進区域について、本年度、市町村が区域を定める場合の基準を県として策定し、防災や景観・森林の保全の観点から促進区域の対象から除外するなど、環境等への影響をできるだけ小さくするよう努めてきたところです。
農地や工業用地の活用、建物の屋上利用など、環境への影響を抑えつつ設置する方法が普及しつつあるため、今後は森林への影響が軽減されていくと予想されています。
発電量が足らずに他の電力も使用するから
太陽光発電は天候や昼夜の影響を受けやすく、安定した電力供給が難しいことがあります。
そのため、他の電源との併用が必要となり、一部ではこれが太陽光発電のエコ性を疑問視する要因になっています。
しかし、エネルギーの需給バランスを取るための蓄電技術や、再生可能エネルギーを効率的に併用するシステムの開発が進められています。
太陽光発電が環境に優しい理由
次に、太陽光発電が環境に優しい理由について改めてご紹介します。
【太陽光発電が環境に優しい理由】
- 温室効果ガスをほとんど排出しない
- 化石燃料を使用しない
- スペースを有効活用できる
温室効果ガスをほとんど排出しない
太陽光発電が環境に優しいと言われている理由の一つは、発電時に温室効果ガスをほとんど排出しないことです。
石油や石炭を燃料とする火力発電では、1kWhあたり数百グラムもの二酸化炭素が排出されますが、太陽光発電ではその心配はありません。
温室効果ガスは地球温暖化に直接的に影響を及ぼすため、同ガスをほとんど排出しない太陽光発電は事実として環境に優しいエネルギーと言えるのです。
化石燃料を使用しない
太陽光発電は、化石燃料に依存しない発電方法です。
一般的な火力発電は石油や石炭、天然ガスといった化石燃料に大きく依存していますが、これらの資源は限りがあり、環境負荷も高いのが現状です。
一方、太陽光発電は太陽のエネルギーを直接利用するため燃料の供給不安や環境への影響を大幅に低減できる点で、太陽光発電は持続可能な未来を支える重要な技術として期待されています。
火力発電に使用する石油や石炭・天然ガスなどの化石燃料は、地球上の埋蔵量に限りのある枯渇性資源ですが、太陽光発電のエネルギー源である太陽エネルギーは無尽蔵なので、枯渇の心配がありません。
スペースを有効活用できる
太陽光発電は、限られたスペースを有効に活用できる点でも優れています。新たに土地を開発しなくても、未利用地や建物の屋根、駐車場、農地など、様々な場所に設置が可能です。
そのため、土地利用の効率化が期待でき、無駄を省くことができます。また、設置場所に制約が少ないことで、都市部や農地周辺でも導入が進みやすく、地域のエネルギー自立にもつながります。
いわゆるデッドスペースを有効活用できることが、太陽光発電の持つエコエネルギーとしての強みをさらに引き立てています。
太陽光発電と環境に関するよくある質問
次に、太陽光発電と環境についてよくある2つの質問にお答えしていきます。
Q.太陽光パネルはどのように廃棄するのですか?
太陽光パネルの廃棄に関しては多くの人が有害廃棄物を心配しますが、実際は杞憂であるとされています。
日本で使用されている太陽光パネルの約95%はシリコン系であり、廃棄時に有害物質を発生させることはありません。
主にガラス、アルミフレーム、太陽電池セル、その他バックシートで構成されており、ガラスは粉砕可能、アルミもリサイクルが容易です。そのため、廃棄することで環境に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
また、適切なリサイクル体制の整備により、太陽光パネルの持続可能性がさらに向上します。
Q.太陽光発電にはどのくらいスペースが必要ですか?
太陽光発電システムの設置にはある程度のスペースが必要ですが、その設置環境によって異なります。自家消費型の太陽光発電設備の場合、住宅や工場等の屋根に設置することが一般的で、特別な土地を必要としないためスペース効率が良いとされています。
一方で、野立ての太陽光発電設備の場合は広大な土地を要することがあります。過去にはこのために森林を伐採したケースも報告されていましたが、現在では規制が強化され、適切な土地利用が求められるようになっています。
このような地理的な条件を考慮しつつ、最適な設置方法を選ぶことが重要です。
太陽光発電はエコじゃないは根拠がない
太陽光発電がエコではないという意見は、誤解に基づいた意見であることがお分かりいただけたかと思います。
太陽光パネルは廃棄時の環境負荷も低く抑えられており、ライフサイクル全体の温室効果ガスの排出量も比較的少ないため、地球環境に優れた選択肢と言えるでしょう。エコなエネルギーの導入を検討している企業様は、「脱炭素LABO」にお気軽にご相談ください。