求められる「脱炭素経営」の手がかりになる「省エネ診断」

世界規模で異常気象が広がり、日本でも夏の極端な暑さや予測を超える冬の豪雪、各地での記録的な降水など、過去の経験から大きく外れた異常気象が毎年のように発生することが増えました。

そのような状況の中で、企業に求められているのが「脱炭素経営」です。省エネなどを通じてCO2の排出量を限りなく減らす対策が求められているのは大企業だけではなく、中小企業も例外ではありません。

ただ、漠然と省エネと言われても、おぼろげな対策は思い浮かぶものの、具体的にどこから着手すればいいのかはなかなか見えてこないもの。そこで、まず試してもらいたいのが「省エネルギー診断（省エネ診断）」です。

求められる脱炭素経営

「脱炭素経営」とは企業が気候変動対策の視点を織り込んだ経営を行うことです。日本では2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目標に掲げており、その目標に向けてすべての企業が努力することは『企業の社会的責任』として、今後は義務化していくとも言えます。

脱炭素のメリット

ただ、大枠で「脱炭素経営が必要」と迫られても、どうしても企業にとって負担が増えるのではないかという懸念点もあります。しかし、これからの時代の流れを含めて、脱炭素経営に取り組むことには以下のようなメリットがあると考えられます。

エネルギーコストの削減

エネルギー価格の高騰が大きな負担となるなか、設備投資や生産プロセスを改善することは、光熱費や燃料費を抑えることにつながります。目に見える直接的なメリットとして恩恵を享受できるかと思います。

知名度・認知度の向上

自社の脱炭素経営が先進的な取り組みとして紹介されたり、表彰されたりすることは、企業イメージの向上になります。取材を受けるなどして露出の機会が増えることは広告戦略のひとつとしても有効です。

競争力の強化と売上拡大

脱炭素に取り組んでいるとアピールすることで、競合他社との差別化が図れます。時流を受けて取引先に排出削減を求める企業も多いので、新規取引先の獲得で優位性を保てると言えます。

資金調達の優位性

金融機関や投資家も時流を受けて脱炭素経営を重視する傾向があり、政府からの補助金・支援についても脱炭素の取り組みが条件のひとつになる場合もあります。積極的に脱炭素経営に取り組むことが優遇措置につながる可能性があります

社員のモチベーションと人材獲得力の向上

外部への影響だけではなく、自社内においても環境への取り組みが影響を与えます。自分の所属する企業が積極的に環境問題に取り組んでいるという姿勢は従業員の意識向上やモチベーションの向上につながります。また、優秀な人材の獲得にもつながると言えるでしょう。

迷ったときは、まず省エネ診断

とはいえ、脱炭素経営を始めようと施策内容などを調べ始めると、情報が多すぎて何から着手するべきか、逆に迷ってしまうこともあるかと思います。その際に思い出してほしいのが「省エネルギー診断（省エネ診断）」です。

省エネ診断を実施すると、実際に専門の診断員が事業所を調査して、施設のエネルギー使用状況を評価し、効率的なエネルギー管理やコスト削減のための改善策を提案してくれます。

省エネ診断でわかること

官公庁の後押しもあり、公的機関によるものや民間企業によるものなど、様々な省エネ診断が存在し、簡易的なものからより専門的なものまで幅がありますが、省エネ診断を実施するとおおむね以下のようなことがわかってきます。

• エネルギー使用状況の把握：設備ごとの電気・ガス・油などの使用量を詳細に分析。
• 改善提案：運用改善（投資不要）と設備更新（投資必要）の2つのアプローチが提案されます。
• コスト削減効果：光熱費削減額や概算投資額、投資回収年などが示されるため、経済的な判断が可能です。

正確な現状把握と専門家からのアドバイスを通じて、コスト削減や環境負荷軽減につながる具体的な施策を検討することができるようになり、自社が取り組むべき脱炭素経営の形が浮かび上がってくることになると思います。

来るべき未来の経営に向けて準備を

今後、どのような形態の企業であっても、省エネなどを通じてCO2の排出量を限りなく減らす脱炭素経営が求められることが加速するのは間違いありません。

最初は戸惑いや負担増などが発生することは避けられませんが、中長期的に考えれば自社のメリットにつながることは間違いないと言えるでしょう。

脱炭素経営を自社の戦略に取り入れる際、ぜひ省エネ診断を思い出して有効に活用してもらえればと思います。