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太陽光発電

ソーラーシェアリングは失敗しやすい?仕組み・メリット・デメリットを解説

新しい農業の形として注目を集めているソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)。

ソーラーシェアリングには、環境保護に取り組みながら農業収入とは別の収入源を得ることができるメリットがある一方で、実は失敗しやすいのではという不安の声も散見されます。

この記事では、ソーラーシェアリングの仕組み・メリット・デメリット・成功させるポイントなどを解説していきます。

太陽光発電などの再生可能エネルギーや、近代的な農業経営について興味のある方はぜひご一読ください。

ソーラーシェアリングとは

ソーラーシェアリングは、農業と太陽光発電を同時に行うための革新的な方法です。農地の上部にソーラーパネルを設置し、農作物の生育と発電を両立させます。

ソーラーシェアリングとは、農地に支柱等を立てて、その上部に設置した太陽光パネルを使って日射量を調節し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取組をいいます。

引用元:ソーラーシェアリングの魅力|神奈川県

ソーラーシェアリングにより、農家は作物の収穫と発電による収入の両方を得ることができます。

地域環境の持続可能な発展に寄与し、農業経営の安定化にも繋がると期待されているソーラーシェアリングは、日本発のアイデアであり、直物の光合成の特性をうまく活用していると言えるでしょう。

ソーラーシェアリングの仕組み

ソーラーシェアリングでは、農地に約2メートル以上の支柱を立て、上部空間に太陽光発電設備を設置します。

引用元:ソーラーシェアリングの魅力|神奈川県

この設備は「営農型発電設備」と呼ばれ、農地上に設置しても農作業には影響を与えません。

植物の光合成には一定の光量が必要ですが、過剰な光は逆に生育に悪影響を与えることもあります。ソーラーシェアリングでは、植物が必要としない部分の光をうまく活用し、発電を行うのです。

ソーラーシェアリングの利益構造

ソーラーシェアリングを導入することで、農家は農作物の収穫と太陽光発電による電力売却の両方から収入を得られます。二重収入は経営の安定化を助け、天候不順や市場価格の変動に対するリスクを軽減するでしょう。

さらに地域経済的な観点からみれば、農業の振興や地域再生にも繋がります。地域社会に新たな雇用を創出し、地産地消、および地方経済を活性化する効果も期待できるでしょう。

ソーラーシェアリングの普及率

ソーラーシェアリングの普及率は年々増加しています。

農林水産省のデータによると、令和3年度の営農型太陽光発電設備の新規許可件数は851件と増加傾向にあります。

引用元:営農型太陽光発電設備設置状況等について|農林水産省

営農型太陽光発電設備の増加は、ソーラーシェアリングの有効性が評価されている証です。

特に静岡県、千葉県、群馬県が多くの設置実績を持ち、累計許可数も他県に比べて高い状況です。これからも全国的にソーラーシェアリングの普及は進むと予想されます。

ソーラーシェアリングのメリット

ここでは、ソーラーシェアリングの具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

【ソーラーシェアリングのメリット】

  • 電気代を削減できる
  • 売電収入を得ることができる
  • 休耕地を有効活用できる
  • 後継者問題の解決につながる
  • 日影が生まれる

電気代を削減できる

ソーラーシェアリングの大きなメリットの一つは、電気代を削減できる点です。発電した電気を農業に直接使用(自家消費)することで電力コストを抑えることが可能です。

農林水産省「営農型太陽光発電について」の取組事例によると、ソーラーシェアリングの導入によって重油と電気代の圧縮の成功し、経費削減を実現した事例が紹介されています。

大規模なトマトの施設栽培を行っていた同社では、重油や電気代の圧縮を目指し、隣接する未利用農地における営農型太陽光発電を実施。発電した電気はハウス内の暖房等に利用され、年間600万円ほどの電気代削減につながる。

引用元:営農型太陽光発電について|農林水産省

特に揚水ポンプを使用する農業形態では電力消費が大きいため、ソーラーシェアリングによる電気代削減効果はとても大きいと言えるでしょう。

売電収入を得ることができる

ソーラーシェアリングを導入し、FIT制度(固定価格買取制度)を適用することで、農業の収入に加えて売電収入を得ることができます。

農業経営による収入のほかに、売電収入が加わることで収入源が二つになるため、収益の安定化を図ることができます。

また、農地は宅地や雑種地に比べて固定資産税が低いため、地目を変えずに済むことも節税に寄与するでしょう。

ソーラーシェアリングによる売電価格はFIT価格を参考にするため、FIT価格について把握しておくことが大切です。

休耕地を有効活用できる

ソーラーシェアリングは、休耕地の有効活用にもつながります。休耕地とは、過去1年以上にわたって作物が栽培されておらず、再開の予定もない土地です。

休耕地に太陽光パネルを設置し、発電することで、収益を生む土地へと変えることができます。

日本には約40万ヘクタールの耕作放棄地があると言われており、その一部でもソーラーシェアリングとして利用できれば、全国的な耕作放棄地の解消にも寄与するでしょう。

後継者問題の解決につながる

農業界における後継者問題も、ソーラーシェアリングが一助となる可能性があります。

現在、多くの農家が高齢者や兼業農家であり、新しい担い手が不足しています。

7割を超える経営体が「農業経営を引き継ぐ後継者を確保していない」と回答しており、「後継者を確保している」経営体は全経営体の4分の1に過ぎません。農業経営体全体で農業後継者の確保問題が深刻化している様子がうかがえます。

引用元:全国各地で農業経営継承の危機が深刻化―7割の経営体が後継者なし―|農林水産政策研究所

引用元:全国各地で農業経営継承の危機が深刻化―7割の経営体が後継者なし―|農林水産政策研究所

収入源を増やし経営の安定性を高めることは、若い世代にとって農業にチャレンジさせるモチベーションとなります。家業を継ぎたいという若者が増え、結果として後継者不足の解消にもつながる可能性があるのです。

日影が生まれる

ソーラーシェアリングでは、太陽光パネルの設置によって農地に自然な日影が生まれます。適度な日陰が作られることで、気温上昇や乾燥を抑える効果が期待できるでしょう。

日影が作られることで、収穫量や品質の向上にもつながる可能性があります。特に夏場の暑さ対策としては有効であり、農作物の育成にポジティブな効果をもたらすでしょう。

ソーラーシェアリングのデメリット

ソーラーシェアリングには多くのメリットがある一方で、デメリットも存在するので事前に確認しておきましょう。

【ソーラーシェアリングのデメリット】

  • 20年間の継続義務が発生する
  • 向かない作物がある
  • 初期費用が高額になる場合がある
  • 申請までの手続きが煩雑
  • 設備費用には融資が下りにくい

20年間の継続義務が発生する

FIT制度を適用しソーラーシェアリングを始める場合、太陽光発電設備で発電した電力の固定買い取り期間が20年間に設定されています。

20年間という長期間の継続が求められるため、計画段階での慎重な検討が不可欠なのです。この期間中、システムを維持し続ける必要があり、それに伴うメンテナンスや運営コストも考慮する必要があります。

とくに気候変動やFIT価格の変更など、不確実性が高い要因を十分に考慮することが重要です。

向かない作物がある

ソーラーシェアリングでは、農地の上にソーラーパネルを設置するため、作物によっては日照量が不足することがあります。

特に、日光が十分に必要な作物にとっては不利です。パネルの影により作物の生産量が減少する場合もあり、どの作物が最適か事前に見極める必要があります。

例えば、葉物野菜や日陰を好む作物は適応しやすいと言われていますが、それ以外の作物には適さないことがあるため、詳細な農地評価と計画が求められるでしょう。

初期費用が高額になる場合がある

ソーラーシェアリングの設置には高額な初期費用がかかることが多いです。

農林水産省が公表している「営農型太陽光発電について|取組事例」によると、設置費用は1,000万円を超えることがほとんどです。

もちろん、設置面積や設置する設備の種類によって導入費用は大きく変動するでしょう。

申請までの手続きが煩雑

ソーラーシェアリングを開始するには、法的な手続きや許認可が必要となります。

これには、農地法や建築基準法、さらに電力会社との契約など、一連の複雑な手続きが含まれます。手続きがスムーズに進まない場合、プロジェクトの開始が遅れることもあるでしょう。

そのため、太陽光発電の設置やソーラーシェアリングの専門家に相談しながら進めることが望ましいです。

設備費用には融資が下りにくい

ソーラーシェアリングの初期費用が高額であるため、金融機関からの資金調達を試みる事業者が多いですが、実際に調達できるかは難しい場合があります。

特に、一般の銀行や信用金庫からの融資は、回収期間が長くリスクが高いと判断され、下りにくいことがあるでしょう。

政策金融公庫や県からの補助金を活用する方法もありますが、手続きに手間がかかります。

太陽光発電の導入に活用できる補助金についてまとめている記事もあるので、併せてご参考ください。

ソーラーシェアリングが失敗する原因

ソーラーシェアリングの導入を検討している方は、事前に失敗要因を確認しておくことが大切です。ここではソーラーシェアリングを導入して失敗してしまう原因をお伝えします。

【ソーラーシェアリングが失敗する原因】

  • 作物の生産量が予想より少なかった
  • コストの見積もりが甘かった
  • 農業の作業効率性が低下した

作物の生産量が予想より少なかった

ソーラーシェアリングでは、ソーラーパネルの影響で作物の日照量が減少することがあります。

計画よりも作物の生産量が少なくなると、本業である農業収益に大きな影響を与えてしまうでしょう。

そのため、ソーラーシェアリングの導入には適切な影の管理と作物選びが重要であり、初期段階での詳細な評価とシミュレーションが不可欠なのです。

コストの見積もりが甘かった

初期投資や運営コストの見積もりが甘い場合、計画が破綻するリスクがあります。

初期設置費用やメンテナンス費用を正確に見積もることが難しく、それによって予算オーバーになることがあります。また、法的手続きや予期せぬトラブルに対する準備も必要と言えるでしょう。

農業の作業効率性が低下した

ソーラーパネルの設置により、農業作業の効率が低下することがあります。

特に、大型機械の導入が難しくなったり、作業動線が複雑化すると、生産効率が低下する可能性があります。事前に効率的な配置と動線計画を立てることが重要です。

ソーラーシェアリングを成功させるためのポイント

次に、ソーラーシェアリングを成功させるためのポイントをお伝えします。

【ソーラーシェアリング成功のポイント】

  • 事業計画書を緻密に作成する
  • 農業へのモチベーションを再確認する
  • 補助金・融資の活用を検討する

事業計画書を緻密に作成する

ソーラーシェアリングを始める前に、詳細な事業計画書を作成することが不可欠です。

事業計画書には、太陽光発電の設置場所や規模、初期投資費用、予想される収益、および運用コストを細かく記載する必要があります。

また、計画書には農業部分の収益見通しや作物の選定、販路の確保方法なども含めるべきです。しっかりとした計画を立てることで、リスクを最低限に抑えることができます。

農業へのモチベーションを再確認する

ソーラーシェアリングは二重の収益源を提供するものですが、農業に対する情熱とモチベーションがなければ成功は難しいです。

農作物の栽培や販売には時間と労力がかかり、継続的な努力が求められます。したがって、農業を本当に行いたいか、そのための知識と意欲をしっかり持っているかを再確認しましょう。

農業に対する熱意がないと、途中で挫折してしまう恐れがあります。

補助金・融資の活用を検討する

ソーラーシェアリングを始めるための初期投資は大きいですが、補助金や融資を活用することで資金調達の負担を軽減することができます。

各自治体や農林水産省が提供する補助金制度を活用することで、初期投資を抑えることが可能です。

例えば、ソーラーシェアリング向けの融資の活用を検討される場合は、下記の金融機関が選択肢に挙げられます。

金融機関名支援メニュー
茨城県信⽤組合農作物栽培ソーラーシェアリング事業
銚⼦信⽤⾦庫営農型太陽光発電設備資⾦
城南信⽤⾦庫ソーラーシェアリング事業に必要な資⾦を⽀援します
岐⾩商⼯信⽤組合太陽光売電設備資⾦(営農型太陽光発電設備を含む)
⽇本政策⾦融公庫環境・エネルギー対策資⾦

引用元:営農型太陽光発電に係る⾦融機関の⽀援施策|農林水産省「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」

金融機関からの融資を検討する際は、ソーラーシェアリングの事業計画書をしっかりと準備し、融資に際しての説明を充分に行うことが重要です。

ソーラーシェアリングの設置事例

ソーラーシェアリングは全国各地で実施されており、成功事例が数多くあります。具体的な事例を見ていきましょう。

千葉県匝瑳市の事例

引用元:営農型太陽光発電について|農林水産省

千葉県匝瑳市では、地域の農業活性化を目指してソーラーシェアリングが導入されました。

この地域では、太陽光発電施設の下でさまざまな作物が栽培されており、特にトマトやナスなどの日照が適度に必要な作物が成功しています。

この事例では地元の農家と連携して販路の確保にも力を入れており、地域経済の活性化にも寄与しています。

福井県坂井市の事例

引用元:営農型太陽光発電について|農林水産省

福井県坂井市でもソーラーシェアリングが導入され、収益を上げています。太陽光パネル下部で栽培している水稲に関しても、品質及び収量の問題はないそうです。

導入者は、「作業をしなくても定期的に副収入を得ることができ、この設備を導入して本当に良かったと思う」といった感想を述べています。

ソーラーシェアリングに関するよくある質問

ソーラーシェアリング向けの補助金はありますか?

はい、多くの自治体や農林水産省からソーラーシェアリングに対する補助金が提供されています。

ソーラーシェアリング向けの代表的な補助金は、環境省の「PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうち、 新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業」です。

引用元:PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業|環境省

補助金を活用することで初期投資を抑え、事業を円滑にスタートさせることができます。

「脱炭素LABO」でも、太陽光発電向けの補助金のご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。

ソーラーシェアリング向けのローンはありますか?

はい、ソーラーシェアリング専用のローンも多くの金融機関で取り扱っています。

ソーラーシェアリング向けのローンは通常、長期返済が可能で、低金利での融資が受けられることが特徴です。

融資を検討する際には、しっかりとした事業計画書を準備し、金融機関に対してソーラーシェアリングの収益性と持続可能性を説明することが重要です。

農地の有効活用にはソーラーシェアリングがおすすめ

農地の有効活用を考える際、ソーラーシェアリングは一つの有力な手段となります。

農業と発電という二重の収益源を持つことで、安定した収益を見込むことができ、農地の一時転用が可能になるため、地目の制約が少なく、様々な地域で実施可能だからです。

長期的に見ると、環境保全や食料自給率の向上にも寄与することが期待されているため、ソーラーシェアリングの普及率は年々増加していくでしょう。

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脱炭素LABO編集部

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