「電気代が経営を圧迫している…」「環境対策は必要だけど、コストがかるのでは?」そんな悩みを抱える企業経営者の方々は少なくないでしょう。じつは太陽光発電の導入は単なるコスト増ではなく、新たな収益源となる可能性を秘めています。
昨今では、工場や店舗の屋根といった“遊休資産”を活用して電気を作り、使わない分を売電することで利益を生み出す企業が増えています。この記事では「中小企業でも太陽光発電で収益が出せるのか?」という疑問について、具体的な事例とデータをもとに解説していきます。
太陽光発電で収益を得る仕組み

中小企業が太陽光発電を導入して余剰電力を販売し、利益を得ることは十分に可能です。この仕組みは「FIT制度(固定価格買取制度)」や「非FIT・FIP制度」を通じて実現します。
FIT制度とは「Feed-in Tariff」の略で、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間・一定価格で買い取ることを国が約束する制度です。2022年度からは「FIP制度(Feed-in Premium)」も始まり、市場価格に一定のプレミアムを上乗せする新たな選択肢も生まれました。
経済産業省資源エネルギー庁の調査によると、これらの制度を利用することで、自社で使い切れない電力を売却して収入を得ることができます。2023年度の買取価格は、10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電では1kWhあたり10円+市場連動価格(FIP制度)となっており、コスト削減と収益確保の双方が期待できます。
実際に利益を上げている企業の例
愛知県の金属加工業「株式会社三宅製作所」は、工場の屋根に太陽光パネルを設置し、休日や生産量の少ない時間帯の余剰電力を売電することで、年間約200万円の収益を上げています。初期投資は約2,000万円でしたが、10年程度で回収できる見込みです。自社消費分の電気代削減効果も合わせると、さらに大きな経済効果が得られているとのことです。
また、広島県の食品製造業「オタフクソース株式会社」は、本社工場に自家消費型の太陽光発電設備(出力:約500kW)を導入し、年間約5,000万円の電気代削減と余剰電力販売による収益を実現しています。同社では電力使用量の約15%を太陽光発電でまかなうことに成功し、環境負荷の低減と経営コストの削減を両立させています。
業種別のメリットと検証

製造業
製造業では、工場の広い屋根を活用できるため、大規模な発電が可能です。工場稼働時に自家消費し、休日や夜間の電力を売電することで効率的な運用ができます。経済産業省のモデル事業では、中小製造業において、投資回収後の年間利益率は平均5~8%程度という調査結果が出ています。また、設備導入時には各種補助金制度も活用でき、初期投資の負担軽減が可能です。
小売業・サービス業
店舗の屋根や駐車場を活用した太陽光発電も効果的です。特に日中の営業が主となる業態では、電力需要と発電タイミングが合致するため効率が良いでしょう。一般社団法人環境共創イニシアチブの「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業」では、商業施設において自家消費と売電を組み合わせることで、年間の電力コストを20~30%削減した事例が複数報告されています。特に、空調負荷の高い夏季において、ピークカットによる基本料金の削減効果が大きいことが示されています。
農業
農業分野では「ソーラーシェアリング」という手法で、農地の上部に太陽光パネルを設置し、農業と発電を両立させる取り組みも広がっています。農林水産省の「営農型太陽光発電取組支援事業」によると、適切な設計により作物の収穫量を維持しながら、1ヘクタールあたり年間200~300万円の売電収入を得ている事例が報告されています。特に、千葉県や静岡県などの日照条件の良い地域では、イチゴやブルーベリーなどの半日陰でも育つ作物との相性が良く、収入の多角化に成功しています。
導入前に確認すべきポイント

- 初期投資と回収計画
- 自社の電力消費パターン
- 設置スペースの確保
- 地域の日照条件
初期投資と回収計画
太陽光発電の設備投資は決して小さくありません。最新の市場価格では、設備容量10kWあたり約200~300万円の費用がかかります。太陽光パネルのメーカーや性能、設置工事の難易度によって費用は変動するため、複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。投資回収シミュレーションでは、パネルの経年劣化(年間0.5~1%程度の発電効率低下)も考慮しましょう。
自社の電力消費パターン
自家消費と売電のバランスを最適化するために、自社の電力消費パターンを詳細に分析することが重要です。電力会社から過去1年分の電力使用量データを取り寄せ、時間帯別・季節別の使用量を把握しましょう。また、デマンドコントローラーを導入して最大需要電力(デマンド値)を抑制することで、基本料金の削減効果も期待できます。
設置スペースの確保
屋根や遊休地など、パネル設置に適したスペースがあるかを確認しましょう。10kWの発電には約50~70㎡のスペースが必要です。屋根の場合は荷重や方角、日照条件、遮蔽物の有無なども重要なチェックポイントです。工場や倉庫の耐震性や防水性も専門家に確認してもらいましょう。
地域の日照条件
地域によって年間日照時間は大きく異なります。日本気象協会のデータによると、太平洋側の地域は日本海側と比較して年間発電量が15~20%多い傾向があります。特に東海、関東、九州南部などは日照条件に恵まれており、発電効率が高くなります。導入を検討する地域の過去の気象データを参考にしましょう。
環境貢献と経済効果の両立を!
中小企業が太陽光発電で余剰電力を販売して利益を得ることは、現実的な選択肢となっています。初期投資は必要ですが、長期的には電気代の削減と売電収入という二重のメリットが得られます。さらにSDGsへの貢献や企業イメージの向上といった副次的効果も期待できるでしょう。
ただし、成功の鍵は綿密な計画と自社の状況に合った設計にあります。専門の施工業者や電力会社、場合によっては中小企業診断士などの専門家に相談しながら、慎重に検討を進めることをお勧めします。
再生可能エネルギーの活用は、環境への配慮と経済的メリットを両立させる、これからの時代の企業経営の重要な選択肢の一つと言えるでしょう。